- 熊野筆とは -
熊野の筆作りの始まりは、19世紀後半、江戸時代の末までさかのぼります。
当時、熊野では農業だけでは生活を支えきれず、農民たちの多くが農閑期には出稼ぎに出ていました。
行く先は紀州(現在の和歌山県)や大和(奈良県)出稼ぎを終えると、奈良に立ち寄り、そこで生産される筆や墨を仕入れては、行商をしながら熊野へ戻るようになりました。 この行商がきっかけとなり、熊野と筆の結びつきが生まれました。
ちょうどその頃、井上治平(いのうえじへい)という若者が広島藩の御用筆司から筆作りの技術を学び熊野に帰ってきました。
同じく、佐々木為治(ささきためじ)や乙丸常太(おとまるつねた)という人たちが摂津有馬(兵庫県)で筆作りの技術を習い覚え帰郷したと言われています。このように他の地で筆作りを学んだ若者たちが熊野に戻り、その技術を広めたことが熊野の筆作りの始まりと言われています。
こうして筆作りは新しい産業としてすぐに取り入れられ、次第に熊野に根付いていき、現在では国内筆生産の 約80% を熊野が占め、広島県を代表する名産品の一つとして位置づけられています。



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